ロボット支援下手術|愛知医科大学 呼吸器外科 - Division of Chest Surgery, Aichi Medical University

Robot-assisted surgery Robot-assisted surgery

2016年より縦隔腫瘍・胸腺摘出術に対して、2018年より肺癌に対して、当院は認定施設として“ダビンチ Xi”(Intuitive Surgical、Sunnyvale、CA)」を用いたロボット支援下手術を行っています。2020年からは、肺癌に対する、より複雑な手術である肺区域切除術をロボット支援下で行っています。

当院には最新の手術支援ロボットである「ダビンチ Xiサージカルシステムがあります。これは従来のダビンチシステム=「ダビンチ Si」をあらゆる面で凌駕しており、手術の安全性を担保する上で患者さんにとっても大きなメリットになります。
ダビンチは、多関節を持つロボットアーム(図2)と鮮明な3次元(3D)スコープを有した手術支援システムです。現在の胸腔鏡下手術は棒の先に小さなピンセットやハサミのついた器具(鉗子と言います。図3)を用いて手術を行っています。例えるなら、“さい箸”を用いて、その先にある腫瘍や肺を切除しています。ダビンチでは多関節を持つ“ロボットアーム”を用いて手術を行うため、外科医の“手”を胸の中に入れて手術を行っている状態に近いのです。この違いは“手”には手首の関節があり、狭いスペースで手術器具を自由に動かせる点にあります。このため、さらに正確な手術が可能となり、ひいては複雑な手術をより安全に提供できると考えています。

  • 図2:ロボットアーム

  • 図3:胸腔鏡用の鉗子

当科では、“ダビンチ“を用いて、前縦隔腫瘍・胸腺摘出術および、肺癌に対する肺葉切除術と肺区域切除術を行っています。
前縦隔とは、胸骨という“天井”と、左右は肺という“壁”に挟まれ、“床”は心臓で出来ているという、非常に狭くデリケートな場所です。この狭い場所にできた腫瘍や胸腺組織を切除するうえで、“手首”の役割を担う関節を有する手術支援ロボットは、高い操作性により正確で安全な手術を可能にすると考えています。
肺癌の手術は、さらなる低侵襲化を求めて、傷の数や大きさだけでなく、切除する肺の大きさを少なくする手術を行っています。これを従来の“肺葉切除術”に対して“肺区域切除術”と呼んでいます(“肺癌”をご参照ください)。
肺区域切除術では切除する血管が細かく、切り取る肺組織が複雑に入り組んでいます。これらを正確に見つけて切除するために、“目”となるロボットの鮮明な3Dスコープと、“手”となる精密なロボットアームが大きな役割を果たすと考えています。
一方でロボット支援下手術の短所としては、従来の胸腔鏡下手術より1.5cmの傷が1~2つ増える、ロボットをセッティングする時間がかかるため、手術時間が30~40分長くなることがあげられます。

ロボット支援手術が可能かどうかは、患者さんの、病状、病気の進行程度、持病の有無などによって適切に判断しています。必ずしも全ての患者さんのご希望に沿えるわけではありませんが、ロボット支援下手術に関する御質問は外来にて当科の医師にお尋ねください。