典型的な転移性肺腫瘍のCT画像
(くっきりとした円形)
肺に他の臓器のがんや悪性腫瘍が転移した場合、「肺がん」とは呼ばず「転移性肺腫瘍」あるいは「転移性肺がん」といい、「原発性」肺がんとは区別されています。肺という臓器は血流が豊富で、心臓から流れ出た血液が最初に到着する場所でもあるため、全身各臓器に発生したがん細胞などが住みつきやすい(転移しやすい)場所です。
呼吸器外科ではこのような肺転移に対する手術治療を行なっています。
手術に耐えられる体力や心肺機能があることが前提となります。以前は、もともとの病巣が治っていること、左右どちらかの肺にだけ転移があること、肺以外に転移していないこと、などが条件でしたが、近年では抗がん剤などの進歩があり、この限りではありません。転移個数が複数であっても技術的に切除可能なら肺切除を行っています。ただし、呼吸器外科医がすべての悪性腫瘍に精通しているわけではありませんので、「肺を切除することで患者さんにメリットがあるかどうか」の判断は、もともとの病気(悪性腫瘍)の主治医が行います。
原発性肺がんとは違い、腫瘍のみを切除すればよいことが多いので、可能であれば「肺部分切除」を行いますが、病気のできた場所や個数によって区域切除や肺葉切除を行うこともあります。
2017年に日本で行われた肺転移に対する手術は8,950件でした。多い順に以下のとおりです。
1. 大腸・直腸がん | 47.4% |
---|---|
2. 腎臓がん | 8.3% |
3. 肺がん | 6.4% |
4. 乳がん | 6.1% |
5. 子宮がん | 5.0% |
6. 咽頭・喉頭がん | 4.9% |
7. 肝臓・胆嚢・膵がん | 4.7% |
これは、愛知医科大学呼吸器外科の集計でも同じような割合です。